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安倍首相宛に「今上陛下の御譲位に関する要望書」を提出

昨日、平成二十九年三月二十八日、内閣府に赴き、内閣総理大臣安倍晋三殿宛に「今上陛下の御譲位の件に関する要望書」を提出致しました。以下に要望書の全文を掲載します。


「今上陛下の御譲位の件に関する要望書」

    昨今における今上陛下の御譲位の問題に関して、安倍内閣は一代限りでの譲位を認める特例法を制定する方針を固めた。しかしこの政府方針は、二つの重大な問題を内包している。
 第一に、陛下は御譲位について一代限りではなく、恒久的な制度化を思召されているということだ。陛下による昨年八月八日の「おことば」を素直に拝聴すれば、それが将来の天皇を含む「象徴天皇」一般の在り方について述べられたものであることは明らかである。第二に、譲位を一代限りで認める特例法は、現行憲法第二条で、皇位は「国会の議決した皇室典範の定めるところによる」とし、さらにその皇室典範の第四条で、皇嗣の即位は「天皇崩御」によるとする規定に違反する。
 本来、我が国の皇位は「天壌無窮の神勅」に基づき、現行憲法が規定するような「主権者たる国民の総意」に基づくものではない。したがって、皇室典範憲法や国会に従属するものではなく、皇位継承の決定権も、一人上御一人に存する筈である。しかしながら、その上御一人であらせられる陛下が、現行憲法の遵守を思し召されている以上は、この度の御譲位も憲法の規定に従う他なく、それに違反する政府方針は御叡慮を蔑ろにするものといわざるを得ない。
 もっとも政府は、衆参両院における与野党協議の結果、皇室典範に附則を置き、そこで特例法と典範は一体であることを明記することで憲法違反の疑義を払拭し、典範改正による譲位の恒久的制度化を主張する野党との政治的妥協を図ったが、肝心なのは、与野党間の政治的合意よりも、御譲位における最終的な当事者であらせられる陛下が、その特例法案を御嘉納あらせられるかという事である。
    安倍首相以下、我々国民の義務は承詔必謹、ただ陛下の御主意に沿い奉り、御宸襟を安んじ奉ることにのみ存するのであって、一度発せられた陛下のお言葉を歪曲する様な行為は絶対に慎まねばならない。特に、この度における御譲位の思し召しは、陛下が将来の天皇のあるべき姿について、長年、熟慮に熟慮を重ねられた上で、御聖断遊ばされたことであり、首相以下我々国民の側にいかに合理的な理由があるといえども、臣下の分際で反対する資格はない。
 ところが、先の「おことば」以来、この度の御譲位の問題に対する安倍内閣の態度は、陛下の御主意に沿い奉る誠意に欠け、はなから特例法ありきでの対応に終始したことは御叡慮を蔑ろにするものと言わざるを得ない。甚だしきは、首相が人選した「有識者会議」の出席者の中から公然と譲位に反対する意見まで噴出したことは極めて遺憾である。異論があるなら、前もって陛下に諫奏申し上げるのが筋であり、後から反対するのは不敬千万、皇威を失墜させ後世に禍根を残す所業である。「有識者会議」は首相の私的諮問機関といえども、安倍首相の政治責任は免れない。                            

    特に、陛下が最初に御譲位の思召しを漏らされたのは平成二十二年に遡るとされ、当然その御内意は歴代の内閣にも伝達されたにも関わらず、政府は聖明を蔽い隠して来た。その責任を棚に上げて、「おことば」という、非常の措置で下された御聖断に盾突くなど言語道断である。
    なお、「有識者会議」での議論を踏まえた「論点整理」では、譲位が将来の全ての天皇を対象とする場合の課題として、「恒久的な退位制度が必要とする退位の一般的・抽象的な要件が、時の権力による恣意的な判断を正当化する根拠に使われる」ことが挙げられているが、「時の権力による恣意的な判断」は、譲位が今上陛下のみを対象とする場合に、「後代に通じる退位の基準や要件を明示しない」ことによっても引き起こされうるのである。
 このように、譲位を一代限りとするか、恒久的制度とするかという当面の問題は、賛否両論に一長一短あり、結論を一決しがたいのであり、だからこそ我々首相以下の国民は、こうした国論を二分しかねない問題については、最終的当事者であらせられる陛下の御聖断を仰ぐほかないのである。したがって、政府は、この度の御譲位に関する特例法案が与野党の政治的妥結を得たとしても、同法案を国会に提出する前に闕下に上奏し、御裁可を仰ぐべきである。
    かつて孝明天皇は、御叡慮に反して通商条約に調印した徳川幕府に御震怒遊ばされ、諸藩に下された密勅の中で、幕府による「違勅不信」の罪を咎められた。これにより朝幕間の齟齬軋轢が天下に露呈したことで、幕府権力の正当性は失墜し、尊皇倒幕の気運が激成して、幕府崩壊の端を開いたのである。このように、我が国における政府権力の正当性は、天皇陛下の御信任に基づくのであって、それは「国民主権原則」や「象徴天皇制」に基づく現行の政府権力においてすら例外ではないということを安倍首相はゆめゆめ忘れてはならない。
 
以上の趣意により、安倍首相及び政府は、君臣の分を弁え、これまでの御叡慮を蔑ろにした態度を猛省すると共に、一切の予断を排して承詔必謹し、以て一刻も早く御宸襟を安んじ奉るべきである。右強く要望する。

                  平成二十九年三月二十八日

内閣総理大臣安倍晋三殿

安倍首相に承詔必謹を求める有志一同
                  (代表)

折本龍則
                  坪内隆彦
                  三浦颯
                 (賛同者)

西村眞悟
                  四宮正貴
                  小野耕資
                  三浦夏南
                  柳毅一郎